徒然なるまま感想文26『COOL 脳はなぜ「かっこいい」を買ってしまうのか』
依然(1週間前くらい)に
「今読んでる本がかなり読み応えがある」と書きましたが、
本日読み終わりましたので、今回はこの本を取り上げたいと思います。
読了までの期間、そして読みごたえと
まさに3冊分!といっても過言ではない1冊だと、
読み終えた今、脳の芯から感じています。
『COOL 脳はなぜ「かっこいい」を買ってしまうのか』
(スティーヴン・クウォーツさん&アネット・アスプさん著、渡会圭子さん訳、
日本経済新聞社さん)
心理学系の本の企画を考えているとき、この本が話題に上っていたので
amazonで注文したのですが、届いてびっくり、393ページもあるじゃないですか!!(装丁を見て「わりと簡単に書かれた本なのかな?」と勝手に思っておりました)
一言でこの本をいえば、
「脳は何を、どうやって”かっこいい(COOL)”
と判断して買うのか」
について、時代背景や文化、経済などを絡めて解き明かしていく本でございます。
分量があまりにも膨大なため、なかなかうまくまとめられるかわかりませんが、
COOLだと思ってもらって買ってもらう立場にある人にはオススメします。
わたくし自身たくさんマーカーで線を引きました。
・脳には、
①目標快楽機械
②習慣快楽機械
③生存快楽機械
があり、それぞれが独自の役割を果たしながら”COOL”を認識している
・ブランドは、脳が世界を理解するためのひとつの方法である
・クールとは、自分の社会的イメージを高めてくれる製品に対して脳が認める、
不思議な経済価値
・比較対象があるかどうかといった要素が、私たちの選択に大きな影響を与える
・大量消費文化への反抗と定義されていた”クール”は、
やがて大量消費文化の主要な”商品”となった
・”尊敬されたい”というインセンティブは、社会的利益につながっている
などがとくに印象に残りました。
で、いったい「何が結局クールなのか?」といいますと、
これはどうも時代背景によって違ってくるようでして、
たとえば1960年代であれば「反逆者のクール」と定義づけられているように
暴力や攻撃性がおもにその要素としてありました。
しかしその要素は徐々に薄れて、
いまやドットコム・クールと呼ばれる形のないものとなったのです。
これは、言ってしまえば「香り」のような目に見えないものでして、
こんなおもしろいデータがあります。
それは寄付にまつわるエピソード。
チャリティイベントに参加する人はかなりたくさんいて、
そのイベントの負傷者の数を見てわかるように
普段から運動している人が参加しているわけではありません。
彼らが熱心に参加するのは、
気前の良さと利他的な慈善心という上等なシグナルを発信できるからなのです。
事実、チャリティにおける匿名の寄付が(寄付だけをした方が楽なのにもかかわらず)寄付金全体の1%にも満たないということからもこれがわかります。
現代における「クール」とは、自分の地位や良さを示す「シグナル」なのです。
だから車も、ただ単に高いだけという理由でプリウスが売れるし(高いものを買えるというシグナル、ハイブリット車を買って環境にも配慮してますよ~というシグナル)、
郵便選挙制を採用したスイスでは、「時間を割いて投票する姿を他人に見せられる」という自尊心をくすぶられるインセンティブが薄まったせいで投票率が落ちたりしたのです。
翻訳書ということもあり、かなりむずかしめに書かれていて、
正直日常の業務にどうやって活かすか(どうやってCOOLな本をつくるか)
はまだ浮かんでこないのですが、読みごたえは十二分ですし、
「なるほど~」という部分もあくさんありました。(覚えきれてはいないですが)
脳科学や心理学に興味あり!という方はぜひ一度チャレンジしてみてください。
分厚いですがおもしろいですよ~